SaaS・ITプロダクト企業の採用サイト戦略
企業名を知る候補者だけでなく、職種・技術・プロダクトから発見される採用サイトのつくり方
公開日: 2026/07/20
最終更新日: 2026/07/20
まとめ
理解できること
- 主要SaaS企業の採用サイトが獲得している検索流入
- SaaS企業の採用サイトに必要な情報設計
- 指名検索から職種・非指名検索へ接点を広げる方法
- 優先して制作すべきページとコンテンツ

SaaS企業の採用サイトが抱える課題
SaaS・ITプロダクト企業は、採用サイトへの投資や情報発信が比較的活発な業界です。
多くの企業が、ミッションやバリュー、社員インタビュー、開発文化、福利厚生、採用ピッチ資料などを公開しています。
一方、コンテンツを増やすだけでは、候補者にとって分かりやすい採用サイトにはなりません。
特に起こりやすいのが、次のような問題です。
- 採用サイト、求人票、note、技術ブログに情報が分散している
- ミッションやカルチャーは伝わるが、職種ごとの違いが分からない
- エンジニア向け情報に比べて、ビジネス職の情報が少ない
- 社内用の職種名が多く、仕事内容を想像しにくい
- プロダクトや顧客課題と募集ポジションがつながっていない
- 社員インタビューを読んでも、関連する求人へ移動できない
- 企業名をすでに知っている候補者にしか届かない
SaaS企業の採用対象は、ソフトウェアエンジニアだけではありません。
SRE、QA、セキュリティ、データ・AI、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、PMM、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、事業開発など、多様な専門職を採用します。
これらの候補者は、必ずしも「SaaS企業へ転職したい」と考えて企業を探しているわけではありません。
例えば、次のような希望を起点に転職先を探します。
- SREとして、より難しい信頼性の課題へ挑戦したい
- 顧客の業務変革へ深く関わりたい
- プロダクトデザインの裁量を広げたい
- 新しい市場をつくるプロダクトへ参加したい
- 自分の業界知識をプロダクト開発に生かしたい
そのため、SaaS企業の採用サイトは会社案内ではなく、「候補者が、自分の専門性とプロダクトが抱える課題を結びつけるための情報基盤」として設計する必要があります。
SaaS企業の採用競合は職種ごとに異なる
エンジニアの採用競合
エンジニアは、SaaS企業だけでなく、Webサービス、FinTech、EC、AIスタートアップ、大手IT企業、コンサルティング会社、事業会社のDX部門なども比較します。
企業規模や業界よりも、次のような条件が比較対象になります。
- プロダクトの成長性
- 技術的な難易度
- 開発組織の成熟度
- 技術選定への裁量
- 働き方
- 専門職としてのキャリア
プロダクト職の採用競合
プロダクトマネージャーやプロダクトデザイナーは、SaaSだけでなく、コンシューマーアプリ、EC、金融サービス、メディア、新規事業部門なども検討します。
候補者が重視するのは、担当する業界だけではありません。
- プロダクトのフェーズ
- 意思決定できる範囲
- 顧客との距離
- 開発チームとの関係
- 事業責任の有無
といった、実際の役割が比較されます。
ビジネス職の採用競合
セールスやカスタマーサクセスの候補者は、ITベンダー、SIer、人材サービス、広告・マーケティング支援、金融、コンサルティングなどからも転職します。
そのため、採用サイトの競合調査をSaaS企業だけで行うと、候補者の比較行動を十分に捉えられません。
「自社と似た会社はどこか」ではなく、採用したい職種の候補者が、ほかにどのような仕事を検討しているかを基準に競合を設定する必要があります。
Ahrefsで見る主要SaaS企業の採用サイト
主要なSaaS・ITプロダクト企業の採用サイトをAhrefsで比較しました。
※2026年7月20日時点のAhrefs推定値です。採用サイトのURL変更、サブドメイン、外部採用管理システム、JavaScript、クロール状況などにより、実際の流入やページ評価とは異なる場合があります。推定オーガニック流入の多い順に掲載しています。HENNGEの被リンク数は今回の取得結果に含まれていないため、「―」としています。
採用サイト | オーガニックキーワード数 | 推定オーガニック流入 | 参照ドメイン | 被リンク |
|---|---|---|---|---|
freee | 120 | 9,493 | 331 | 7,794 |
マネーフォワード | 47 | 3,836 | 188 | 3,734 |
Sansan | 49 | 3,559 | 157 | 832 |
SmartHR | 76 | 3,469 | 163 | 4,019 |
カオナビ | 31 | 1,811 | 33 | 469 |
LayerX | 26 | 1,154 | 174 | 3,234 |
HENNGE | 14 | 242 | 2,280 | ― |
今回の調査では、freeeの採用サイトがオーガニックキーワード数、推定流入ともに最大でした。Sansan、SmartHR、マネーフォワードも、採用サイト単体で月間3,000を超える推定オーガニック流入を獲得しています。
これらの採用サイトは、採用トップと求人一覧だけで構成されているわけではありません。
- 職種別ページ
- エンジニア向けページ
- プロダクト・事業紹介
- 給与・福利厚生
- カルチャー
- 社員・チーム紹介
- 採用ブログ
- 新卒・キャリア別ページ
など、候補者の検討段階に応じたページを用意しています。
単にコンテンツ数が多いのではなく、企業理解から仕事理解、求人検討までを複数のページで受け止めていることが特徴です。


傾向1. 指名検索を確実に受け止めることが、採用SEOの基盤になる
SmartHR、Sansan、カオナビの上位流入キーワードには、企業名と「採用」「求人」「転職」「新卒」「福利厚生」などを組み合わせた指名検索が多く見られます。
例えばSansanでは、次のような指名キーワードで1位を獲得しています。
キーワード | 月間検索数 | 順位 | 推定流入 |
|---|---|---|---|
Sansan 採用 | 1,200 | 1位 | 1,400 |
Sansan 求人 | 600 | 1位 | 284 |
Sansan 転職 | 700 | 1位 | 281 |
Sansan 新卒 | 600 | 1位 | 224 |
Sansan 中途採用 | 300 | 1位 | 101 |
Sansan 福利厚生 | 300 | 1位 | 100 |
Sansanは、新卒採用とキャリア採用のページを分けながら、それぞれの検索意図に対応しています。
特に、「Sansan 営業」「Sansan インサイドセールス」では、営業職を紹介する個別ページが1位を獲得しています。
企業名を知っている候補者に対しては、採用トップだけでなく、職種、選考、福利厚生、FAQなどの個別ページを用意することが有効です。
SmartHRでも同様に、「SmartHR 採用」「SmartHR 年収」「SmartHR 求人」「SmartHR 新卒」など、採用検討時の指名検索が流入の中心です。
キーワード | 月間検索数 | 順位 | 推定流入 |
|---|---|---|---|
SmartHR 採用 | 2,300 | 1位 | 885 |
スマートHR 採用 | 900 | 1位 | 528 |
SmartHR 年収 | 700 | 1位 | 308 |
SmartHR 求人 | 450 | 1位 | 235 |
SmartHR 新卒 | 250 | 1位 | 150 |
SmartHR 中途採用 | 250 | 1位 | 126 |
SmartHR 新卒採用 | 200 | 1位 | 124 |
SmartHR 転職 | 300 | 1位 | 117 |
SmartHR 福利厚生 | 150 | 1位 | 50 |
一方、上位表示されている非指名キーワードは限定的です。今回の調査では、「ドメインエキスパート」が1位、「インサイドセールス 採用」が5位でした。
採用ブランドが強い企業であっても、検索流入の多くは、すでに企業名を知っている候補者から生まれています。
SmartHR、Sansan、カオナビの事例を見ると、企業名を含む採用検索を公式サイトで受け止めることが、採用SEOの第一段階です。
特に、次の検索意図は採用トップだけでなく、対応する個別ページを設ける価値があります。
検索意図 | 対応するページ |
|---|---|
会社名+採用・求人・転職 | 採用トップ・キャリア採用 |
会社名+新卒・インターン | 新卒採用・イベント |
会社名+年収・福利厚生 | 給与・評価・働く環境 |
会社名+職種 | 職種紹介・求人一覧 |
会社名+選考・面接 | 選考フロー・FAQ |
会社名+リモート | 働き方・対象求人 |
会社名+第二新卒 | キャリア採用・対象求人 |
Sansanでは「Sansan 選考フロー」に新卒FAQ、「Sansan 面接」にキャリア採用FAQが表示されています。
候補者の検討検索を採用トップだけに集中させず、検索意図ごとのページで受け止めることで、必要な情報へ直接案内できます。
傾向2. 指名検索だけでは、企業認知の範囲を超えられない
カオナビの採用サイトは、推定流入1,811を獲得していますが、その多くは次の指名検索です。
キーワード | 月間検索数 | 順位 | 推定流入 |
|---|---|---|---|
カオナビ | 67,000 | 1位 | 940 |
カオナビ 採用 | 1,100 | 1位 | 476 |
カオナビ 求人 | 200 | 1位 | 122 |
カオナビ 転職 | 200 | 1位 | 80 |
カオナビ 福利厚生 | 60 | 1位 | 21 |
カオナビ 年収 | 350 | 9位 | 13 |
一方、主要な非指名検索として確認できたのは、「募集職種」の5位などに限られます。
指名検索への対応は、すでに企業を知っている候補者の取りこぼしを防ぐ施策です。採用母集団を企業認知の外側へ広げるには、職種、技術、キャリア、働き方などの非指名検索にも対応する必要があります。
傾向3. 職種ハブや解説記事は、非指名検索の入口になる
freeeも、検索流入の中心は指名検索です。
キーワード | 月間検索数 | 順位 | 推定流入 |
|---|---|---|---|
freee | 218,000 | 1位 | 4,317 |
freee 採用 | 1,100 | 1位 | 1,294 |
freee 求人 | 400 | 1位 | 295 |
freee インターン | 400 | 1位 | 260 |
freee 新卒 | 250 | 1位 | 203 |
freee 転職 | 300 | 1位 | 148 |
freee 中途採用 | 200 | 1位 | 148 |
freee 福利厚生 | 600 | 1位 | 60 |
freee 年収 | 700 | 10位 | 58 |
ただし、freeeでは職種や採用テーマに関する非指名検索でも上位を獲得しています。
キーワード | 月間検索数 | 順位 | 推定流入 |
|---|---|---|---|
PMM | 1,700 | 2位 | 496 |
エンジニア 採用 | 1,100 | 3位 | 168 |
採用ブログ | 150 | 1位 | 158 |
エンジニア採用 | 450 | 3位 | 40 |
PMMとは | 600 | 7位 | 43 |
エンジニア 採用サイト | 150 | 2位 | 19 |
「PMM」「PMMとは」では、社員インタビュー記事が上位表示されています。社員個人の紹介だけでなく、PMMの役割や仕事内容を理解できる内容になっているため、職種理解の検索意図にも対応していると考えられます。

また、「エンジニア 採用」「エンジニア 採用サイト」では、個別求人ではなく、エンジニア採用のハブページが検索流入を獲得しています。

この結果から、SaaS企業の採用SEOでは、次の組み合わせが有効だと考えられます。
- 職種を体系的に紹介するハブページ
- 職種の役割や専門性を説明する記事
- 実際の社員やプロジェクトを紹介するコンテンツ
- 現在募集している求人
個別求人は募集終了後に非公開となる可能性があります。一方、職種ハブや仕事理解の記事は、求人の募集状況に左右されず、継続的に検索流入と候補者接点を蓄積できるコンテンツになります。
傾向4. 被リンク評価と採用検索の流入は分けて確認する
HENNGEの採用サイトは、今回の調査対象の中で参照ドメイン数が特に多い一方、オーガニックキーワード数と推定流入は限定的でした。
HENNGEは参照ドメイン数が多い一方、今回の調査対象ではオーガニックキーワード数と推定流入が限定的でした。被リンク評価と採用検索の流入は分けて確認し、リンクの発生源、調査対象URL、過去のURL変更なども含めて判断する必要があります。
採用関連の検索流入を増やすには、被リンクだけでなく、次のようなコンテンツと検索設計が求められます。
- 職種ごとの検索意図に対応するページ
- 企業名と採用条件を組み合わせた検索を受け止めるページ
- 仕事内容を具体的に説明するコンテンツ
- 求人と継続コンテンツを接続する内部リンク
- 検索結果でページ内容が伝わるタイトルと見出し
したがって、参照ドメイン数や被リンク数は単独で評価せず、検索されるテーマに対応したページがあるかと合わせて確認する必要があります。
非指名検索を獲得するには、職種別の検索需要に対応する
Ahrefsで、SaaS・ITプロダクト企業の採用に関連するキーワードを調査しました。
キーワード | 月間検索数 | 主な検索意図 |
|---|---|---|
カスタマーサクセス 求人 | 1,300 | 職種求人 |
セキュリティエンジニア 求人 | 800 | 職種求人 |
SaaS 転職 | 700 | 業界転職 |
SaaS 営業 | 700 | 仕事理解・転職 |
QAエンジニア 求人 | 700 | 職種求人 |
フロントエンドエンジニア 求人 | 700 | 職種求人 |
インサイドセールス 求人 | 700 | 職種求人 |
カスタマーサクセス 転職 | 500 | 職種転職 |
Webエンジニア 求人 | 450 | 職種求人 |
自社開発 エンジニア | 450 | 企業・環境比較 |
SRE 求人 | 400 | 職種求人 |
プロダクトデザイナー 求人 | 350 | 職種求人 |
フルリモート エンジニア | 350 | 働き方・求人 |
プロダクトマネージャー 求人 | 300 | 職種求人 |
機械学習エンジニア 求人 | 250 | 職種求人 |
SaaS 求人 | 200 | 業界求人 |
IT営業 転職 | 200 | 職種転職 |
バックエンドエンジニア 求人 | 200 | 職種求人 |
ソフトウェアエンジニア 求人 | 150 | 職種求人 |
PdM 求人 | 150 | 職種求人 |
フィールドセールス 求人 | 150 | 職種求人 |
PMM 求人 | 80 | 職種求人 |
SaaS 未経験 転職 | 50 | 異業界転職 |
UI UXデザイナー 求人 | 40 | 職種求人 |
検索需要は、「SaaS企業で働きたい」という業界軸だけでなく、カスタマーサクセス、セキュリティ、QA、インサイドセールス、SREなどの具体的な職種にも分散しています。
そのため、採用サイトの第一階層を「会社について」「社員について」だけで構成するのは不十分です。少なくとも、「職種から探す」「プロダクト・事業から探す」という二つの入口を用意します。
一方で、すべての職種ページを検索ボリューム順に制作すればよいわけではありません。
職種ページの制作優先順位は、検索ボリュームだけではなく、次の4つを掛け合わせて判断します。
- 自社における採用優先度
- 対象キーワードの検索需要
- 自社ならではの仕事や課題を説明できるか
- 現在の検索順位と上位ページの種類
例えば、「カスタマーサクセス 求人」は検索需要が大きいものの、求人媒体や転職サービスも競合になります。
採用サイトが上位を目指すには、求人一覧だけでなく、
- どのような顧客を担当するか
- 顧客成果をどう定義しているか
- 担当社数や支援期間
- 売上責任の有無
- プロダクト改善への関わり
- 社員の具体的な支援事例
- キャリアパス
など、企業固有の情報が必要です。
検索ボリュームはテーマ選定の参考にしつつ、その企業で働く違いを示せるテーマから制作することが重要です。
SaaS採用サイトに必要な情報設計
職種から仕事を探せるようにする
SaaS企業には、一般企業では馴染みの薄い職種名が多く存在します。
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
- カスタマーサポート
- PMM
- PdM
- プロダクトデザイナー
- セールスイネーブルメント
- RevOps
- BizOps
- DevRel
- ドメインエキスパート
社内では役割が明確でも、異業界の候補者には違いが伝わりません。
例えば、営業・顧客支援に関連する職種だけでも役割は異なります。
職種 | 主な役割 |
|---|---|
インサイドセールス | 見込み顧客との接点をつくり、商談を創出する |
フィールドセールス | 顧客課題を整理し、契約まで提案を進める |
カスタマーサクセス | 契約後の活用を支援し、顧客成果へつなげる |
カスタマーサポート | 問い合わせや利用上の問題を解決する |
パートナーセールス | 外部パートナーと販売・導入機会を広げる |
PMM | 市場・顧客とプロダクトをつなぐ |
PdM | プロダクトの方向性と優先順位を決める |
職種ページでは、業務内容の一覧だけでなく、次の情報を示します。
- 誰に価値を提供する職種か
- 事業のどの課題を担うか
- 何を成果として評価するか
- どの部署と連携するか
- どこまで自分で意思決定できるか
- 仕事の難しさは何か
- どのようなキャリアへ進めるか
「何をする仕事か」だけでなく、何を判断し、何に責任を持つ仕事なのかまで説明することが重要です。
参考サイト:SmartHR
SmartHRは「仕事を知る」の配下で、エンジニアやインサイドセールスなどの職種を個別に紹介しています。職種紹介と求人一覧の絞り込みが接続されている点が参考になります。
参考サイト:Sansan
Sansanはキャリア採用の中で、ビジネス職とエンジニア職を整理し、営業職について独立した紹介ページを設けています。企業名と職種を組み合わせた検索を受け止める構造として参考になります。
- 中途採用:https://jp.corp-sansan.com/recruit/midcareer/
- 営業職紹介:https://jp.corp-sansan.com/recruit/midcareer/businessinformation/sales/
プロダクト・事業から探せるようにする
複数のプロダクトを持つSaaS企業では、同じ職種でも仕事が大きく異なります。
例えば、同じカスタマーサクセスでも、次の条件によって役割が変わります。
- 中小企業向けか、エンタープライズ向けか
- 新規プロダクトか、成熟プロダクトか
- 単一製品を担当するか、複数製品を横断するか
- オンボーディングを担うか、更新やアップセルまで担うか

採用サイトでは、職種とプロダクトを別々に紹介するのではなく、相互に移動できる構造にします。
職種ページから掲載する情報
- 担当するプロダクト
- 関連する事業
- 所属するチーム
- 関連する社員
- 募集中の求人
プロダクトページから掲載する情報
- 解決する顧客課題
- プロダクトのフェーズ
- 事業上の課題
- 関わる職種
- チーム
- 募集中の求人
参考サイト:マネーフォワード
複数のサービス・組織と、エンジニア、PdM、デザイナー、ビジネスなどの職種情報を掲載しています。会社全体と各組織の関係を伝える参考事例です。
参考サイト:LayerX
職種、詳細職種、サービス、働き方などから、候補者が自分に合う採用情報を探せます。候補者の関心を起点に情報を提示する事例です。
参考サイト:freee
会社、プロダクト、カルチャー、職種、採用ブログを横断して閲覧でき、エンジニア採用を独立した情報群として設計しています。
プロダクトの機能ではなく、顧客の変化を伝える
採用サイトでプロダクトを紹介する際、機能一覧や導入社数だけを掲載しても、仕事の意義は十分に伝わりません。
応募判断に必要なのは、次の情報です。
- 誰がどのような課題を抱えているのか
- 導入前後で業務がどう変わるのか
- プロダクトが生み出す価値は何か
- 各職種がどの段階に関わるのか
例えば、経費精算のSaaSであれば、
申請書を電子化するプロダクト
と説明するだけではなく、
従業員、承認者、経理担当者が費やしている確認作業を減らし、本来の業務へ集中できる状態をつくるプロダクト
と伝えます。
そのうえで、職種ごとの役割を接続します。
- セールス:顧客の業務課題を発見する
- カスタマーサクセス:導入後の業務変革を支援する
- PdM:複数の顧客に共通する課題をプロダクトへ落とし込む
- エンジニア:安全かつ継続的に仕組みを実装する
- デザイナー:複雑な業務を迷わず操作できる体験へ変える
エンジニア採用は専用ハブとして設計する
エンジニアは、一般的な会社紹介や求人票だけでは応募を判断できません。プロダクト、技術課題、開発組織、職種、キャリア、選考などをまとめた専用ハブが必要です。
freeeのエンジニア採用ページは、次の非指名検索で上位を獲得しています。
キーワード | 月間検索数 | 順位 |
|---|---|---|
エンジニア 採用 | 1,100 | 3位 |
エンジニア採用 | 450 | 3位 |
エンジニア 採用サイト | 150 | 2位 |
上位表示されているのは、特定の求人票ではなく、エンジニア採用全体を説明するハブページです。この結果から、個別求人に加えて、エンジニアが応募を判断するための情報を集約したページにも検索需要があることが分かります。
エンジニア採用ハブには、次の情報を統合します。
- プロダクトと技術課題
- 開発組織
- エンジニア職種一覧
- 技術スタック
- 開発プロセス
- 技術記事
- 社員インタビュー
- 評価・キャリア
- 選考プロセス
- 募集中の求人
単なる求人一覧ではなく、エンジニアが応募を判断するための情報群として設計することで、検索流入の獲得と応募前の情報提供を両立できます。
エンジニア採用ページでは、使用技術のロゴを並べるだけでなく、現在の技術課題や意思決定の背景まで伝えることが重要です。
また、バックエンド、フロントエンド、SRE、QA、セキュリティ、データ、機械学習などを「エンジニア」として一括りにせず、役割の違いを確認できるようにします。
参考サイト:freeeエンジニア採用
プロダクト、開発組織、エンジニアの働き方、社員、求人などを、エンジニア候補者向けにまとめたハブページです。
https://jobs.freee.co.jp/engineers/
参考サイト:SmartHRエンジニア紹介
エンジニアの役割、組織、メンバー、キャリアなどを職種単位で確認できます。
https://recruit.smarthr.co.jp/work/engineer/
異業界からの転職経路を示す
SaaS経験者だけを採用対象にすると、採用母集団を十分に広げにくい場合があります。
一方、異業界の候補者は、自分の経験がSaaS企業で通用するか判断できません。
採用サイトでは、前職経験と活躍できる職種を接続します。
前職・経験 | 活かせる職種・領域 |
|---|---|
人材営業 | インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス |
金融法人営業 | エンタープライズセールス、FinTech関連事業 |
SIer | 導入支援、プリセールス、PM、エンジニア |
コンサルティング | カスタマーサクセス、事業開発、導入コンサルタント |
経理・人事・法務 | ドメインエキスパート、PdM、カスタマーサクセス |
広告・マーケティング | PMM、マーケティング、グロース |
制作会社 | プロダクトデザイン、コミュニケーションデザイン |
カスタマーサポート | カスタマーサクセス、サポート企画、業務改善 |
「未経験歓迎」と記載するだけでなく、どの経験が、どの仕事で、どのように生かせるかを示します。
異業界転職を扱う参考サイトでは、社員の入社理由だけでなく、次の点を確認します。
- 前職の業界・職種
- 転職前に感じていた不安
- 活かせた経験
- 入社後に新しく学んだこと
- 最初に任された仕事
- 現在の役割
- 今後のキャリア
採用ブログや社員インタビューを「人柄紹介」で終わらせず、候補者が自分の経験との共通点を探せるようにします。
参考サイト:freee採用ブログ
中途入社者の前職、転職理由、入社後の仕事内容を記事単位で確認できます。https://jobs.freee.co.jp/recruitblog/career/
参考サイト:SmartHR採用サイト
職種紹介や社員コンテンツを横断して確認できるため、前職経験と入社後の仕事を接続するコンテンツ設計の参考になります。https://recruit.smarthr.co.jp/
参考サイト:LayerX採用サイト
職種、サービス、働き方などから情報を探せるため、異業界候補者が自分との接点を見つける導線設計の参考になります。https://jobs.layerx.co.jp/
コンテンツから求人へ移動できるようにする
SaaS企業では、採用サイト以外にも、技術ブログ、デザイナーブログ、note、Speaker Deck、Wantedlyなど、複数の媒体で情報を発信しています。
問題は、情報が分散していることそのものではありません。
候補者が、記事を読む → 仕事内容を理解する → 関連する社員を知る → 求人を確認する → 応募するという流れで移動できないことが問題です。
採用サイトを情報の中心に置き、各媒体へ行き来できる構造をつくります。
媒体 | 主な役割 |
|---|---|
採用サイト | 会社、事業、職種、働く環境、求人の全体像 |
技術ブログ | 技術課題、設計、実装、障害対応、開発文化 |
note・採用ブログ | 社員、プロジェクト、カルチャー、組織の変化 |
求人票 | 募集背景、具体的業務、応募要件、条件、選考 |
社員インタビューや技術記事には、関連する職種ページ、プロダクトページ、求人を紐づけます。
SaaS企業が優先して制作すべきページ
すべてのコンテンツを同時に制作する必要はありません。
指名検索の受け皿を整えたうえで、採用需要の大きい職種や、自社が採用を強化したい職種から順に制作します。
ページタイプ | 主な検索意図 | 役割 |
|---|---|---|
採用トップ | 会社名+採用 | 採用情報全体の入口 |
キャリア採用 | 会社名+転職・中途 | 中途候補者の検討を受け止める |
新卒採用 | 会社名+新卒・インターン | 新卒向け情報と選考をまとめる |
働く環境 | 会社名+年収・福利厚生 | 条件や制度の比較に対応する |
職種ハブ | 職種名+採用・求人 | 仕事内容と関連求人をまとめる |
職種解説記事 | 職種名+とは | 仕事理解を促し、職種ハブへつなぐ |
FAQ | 会社名+面接・選考 | 選考時の不安を解消する |
プロダクト・事業ページ | 会社名+サービス名・事業名 | プロダクトの課題と関わる職種を接続する |
キャリア記事 | 前職+転職 | 異業界候補者との接点をつくる |
求人一覧 | 職種・勤務地・働き方 | 条件に合う求人へ案内する |
採用SEOは、記事数を増やす施策ではありません。候補者の検索意図ごとに適切なページタイプを割り当て、そのうえで自社の採用状況に応じて制作順を決めます。ここからは、SaaS企業における制作の優先順位を整理します。
優先度1:指名検索の受け皿
まずは、企業名をすでに知っている候補者の検索意図を確実に受け止めます。
- 会社名 採用
- 会社名 求人
- 会社名 転職
- 会社名 中途採用
- 会社名 新卒
- 会社名 年収
- 会社名 福利厚生
- 会社名 リモート
- 会社名 エンジニア
- 会社名 選考
- 会社名 面接
採用トップだけですべてを受け止めるのではなく、求人、働く環境、給与・評価、職種ページなど、検索意図に対応するページを用意します。
優先度2:職種別ハブ
検索需要と採用優先度を踏まえ、次のような職種から整備します。
- カスタマーサクセス
- インサイドセールス
- QAエンジニア
- セキュリティエンジニア
- フロントエンドエンジニア
- SRE
- プロダクトデザイナー
- プロダクトマネージャー
- PMM
職種ページには、仕事内容、責任範囲、成果指標、連携部署、社員、キャリア、求人をまとめます。
優先度3:プロダクト・事業ページ
職種だけでなく、プロダクトや事業から仕事を探せるようにします。
プロダクト・事業ページには、次の情報を掲載します。
- 解決する顧客課題
- 顧客やユーザー
- ビジネスモデル
- プロダクトのフェーズ
- 現在の事業課題
- 関わる職種
- 所属する社員
- 関連求人
複数プロダクトを持つ企業では、同じ職種でも仕事の違いが分かるようになります。
優先度4:前職経験・キャリアチェンジのコンテンツ
SaaS経験者以外へ採用対象を広げるため、前職経験やキャリアチェンジを起点に、職種ページ、社員インタビュー、転職事例などを制作します。
- SIerから自社プロダクトへ
- 法人営業からSaaS営業へ
- コンサルタントからカスタマーサクセスへ
- 経理・人事からドメインエキスパートへ
- 制作会社からプロダクトデザイナーへ
単なる転職体験談ではなく、過去の経験がどの業務で生かされているかまで説明します。
優先度5:働き方・条件ページ
候補者は、理念や仕事だけでなく、条件や働き方も比較します。
- 給与レンジ
- 等級・評価
- 昇給
- ストックオプション
- 出社頻度
- リモートワーク
- 副業
- 休暇
- 育児・介護
- オンボーディング
これらの情報を制度ページに掲載するだけでなく、対象となる求人から確認できるようにします。
例えば、リモートワーク制度があっても、職種やチームによって利用条件が異なる場合があります。求人単位で出社頻度や居住地条件を確認できる構造が必要です。
【関連記事】採用サイトの求人検索設計|職種・勤務地・働き方で探せる一覧のつくり方
SaaS企業の採用サイト構成例
SaaS・ITプロダクト企業の採用サイトでは、次のような情報設計が考えられます。
会社を知る
- ミッション・ビジョン
- 解決する社会・顧客課題
- 事業ポートフォリオ
- ビジネスモデル
- 数字で見る会社
- これまでとこれから
仕事を知る
- 職種一覧
- エンジニア
- プロダクトマネージャー
- PMM
- プロダクトデザイナー
- セールス
- カスタマーサクセス
- マーケティング
- 事業開発
- コーポレート
プロダクトを知る
- プロダクト一覧
- 顧客課題
- 事業フェーズ
- チーム
- 技術課題
- 関連職種
- 募集中の求人
開発・プロジェクトを知る
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まとめ
SaaS・ITプロダクト企業の採用サイトは、他業界と比べて情報発信が活発です。
しかし、ミッション、カルチャー、社員インタビュー、求人情報を増やすだけでは、多様な専門人材へ十分に届きません。
今回のAhrefs調査から、採用SEOには大きく二つの段階があることが分かります。
- 一つ目は、企業名と採用、求人、転職、年収、福利厚生などを組み合わせた指名検索を公式サイトで受け止める段階です。SmartHR、Sansan、カオナビでは、こうした指名検索が上位流入キーワードの多くを占めています。
- 二つ目は、職種ハブ、仕事理解記事、プロダクト・事業ページ、社員・プロジェクト記事を整備し、「PMM」「PMMとは」「エンジニア 採用」などの非指名検索へ接点を広げる段階です。freeeでは、職種や採用テーマに関する検索からも流入を獲得しています。
採用SEOでは、まず指名検索の受け皿を整え、その後、企業名をまだ知らない候補者との接点を広げていく順番が基本となります。そのうえで、職種ハブ、仕事理解記事、プロダクトページ、社員・プロジェクト記事を整備し、企業名をまだ知らない候補者との接点を広げます。
こうした情報設計によって、採用サイトは次のような候補者にも発見されるようになります。
- 自分の職種について理解を深めたい人
- 新しい専門職へ挑戦したい人
- 技術的な課題を探している人
- 顧客の業務を変える仕事を探している人
- 自分の業界経験をプロダクトへ生かしたい人
SaaS企業の採用サイトに必要なのは、抽象的な採用メッセージを増やすことではありません。職種、プロダクト、顧客課題、技術課題、キャリア、働き方を構造化し、候補者が自分の専門性と企業の課題を結びつけられる状態をつくることです。
採用サイトを、会社への共感を伝えるだけの場所から、専門人材が自分に合う仕事と次の挑戦を発見できる情報基盤へ進化させることが、候補者との接点拡大と応募判断の支援につながります。